
初飛行40周年記念企画展「飛鳥」
前回のコラムで、ようやくタイトルが決まり、チラシやポスターができるまでを書いてきました。
今日は、図録を作るお話です。
そうだ、図録を作ろう!
初飛行40周年記念企画展「飛鳥」では、図録を販売しています。
企画展の展示ではスペースや構成の都合上、書けなかったコトや、置けなかったモノの写真を掲載しています。
企画展の担当である私の目標の一つに、100ページを超える図録を作りたい!というのがありました。
当初は、その目標に届くくらいになるかなと思っていました。
構成を練って、文章を書いて、でき上がったら170ページを超えていましたね。びっくりしました!
印刷業者との作業の中で、図録の表紙や、中身が仕上がっていくたびにワクワクし、本になって手元に届いたときには安心感と達成感が溢れました。
さて、今回のコラムでは「できるまで」は詳しく書かず、図録のこだわりポイントをいくつか紹介してみます。

1.「飛鳥」に特化した本を作る
世の中にあるSTOL実験機「飛鳥」に関する書籍や出版物は多くありません。
また、飛行機に詳しい方でも「飛鳥」のことを知っている方は多くはいらっしゃらないのではないでしょうか。
「飛鳥」のことを知っている方も、知らない方もこれ一冊を持っていれば「飛鳥」について知る、思い出すことができるコンプリートブックを作りたい。そんな思いで作ったのが今回の図録です。
そのため、機体については特に詳しく書きました。
この1冊を読めば「飛鳥」のすべてが分かる。そんな一冊になっています。
なお、本書の表記はすべて、当時の論文やマニュアルに則っています。
少し聞き慣れない用語や今は使わない専門用語、社内用語と思われる表記もありますが、そこは当時の表記を尊重しました。
2.コックピットと関わった人々を見せたい!
書籍の中の第三章は、飛行試験に関する章にしています。
その後半部である、3-5「操縦席大解剖」、3-6「飛鳥の操縦者たち」、3-7「飛鳥を飛ばす・支える」は、地味かもしれませんが、こだわりを持って書いています。
まずは、「操縦席解剖」。
見開きの操縦席のページで始まり、操縦士席、副操縦士席、フライトエンジニア席の計器などを細かく解説しています。パイロットになった気分で、見て頂ければと思います。
このページには大きな難所がありました。
それは、写真です。
決して明るいとは言えない、そしてシートや部品がひしめく限られたスペースでのコックピット内部の撮影には大変苦労しました。
特に、見開きページにしている全体像の写真は、暗い機内なのでシャッタースピードを遅くしたいという反面、写真がブレてもいけない。ただし、三脚を立てるスペースもないという状態での撮影になりました。結果、インパクトのある面白いページになったのかなと思っています。
そして、3-6と3-7は操縦者や周りの人々を紹介するページです。
「飛鳥」を紹介するとき、どうしてもその機体などに注目がいきがちですが、飛ばして支えた多くの人がいました。
特に、今回の企画展で調査を進めるうちに、たくさんのアルバムが見つかり、多くの搭乗員や整備士、計測員、研究者が写されていることを発見しました。
実は、冬季保命訓練や夏季保命訓練はそれだけで数冊のアルバムが出来上がっていたのです。
パイロットや搭乗員はもちろん、縁の下の力持ちである周りの人々にも焦点を当てたい。
そんな思いで作り上げたのが、この2節、4ページです。

3.博物館の持つ「飛鳥」資料を一挙に出したい!
今回、ほとんど文字がなく写真が中心の章があります。第四章です。
「飛鳥」の計器類や装備品の写真を並べた章ですね。
この章はいろいろな博物館の図録を読んでいた担当が、写真だけで勝負するページへの憧れを持ったことで誕生しました。
だって、国宝や重要文化財の写真集みたいな図録もかっこいいんだもの。
第四章の写真は担当者自身が撮影しています。
撮影ブースを購入してもらい、その中で撮影しました。
こだわりは、銘板の文字が読めるように入れているところ。
その物がどんなものかを最も的確に表すのが「銘板」です。
その物の名前や製造年月日、製造会社などが記されています。
すべての飛行機にもついていますが、計器一つ一つにもあるんだよというのを見ていただければと思います。
なお、一部の資料は企画展では公開していません。
会期途中での入れ替えを検討しています。
もうすでに企画展をご覧いただいた皆さんも、またぜひご来場ください。
(写真) フォトブースで撮影する安福
図録は、担当が特に力を入れたものの一つです。
そのため、コラムも長くなってしまいましたね。
図録はミュージアムショップで1,980円で販売しています。
担当者の想いがこもった図録です。ぜひお買い求めください。
さて、今回はここまでにしましょう。
次回はパネルを作る過程を紹介します。
お楽しみに!!